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執筆者の写真Simon Yoh

窓辺の母と子(2)

更新日:2023年11月4日



2022.4.23

窓とはいったい何でしょう。

窓は単に自分のいる空間と外界とを仕切るだけではなく、時にその仕切りを通して自分と外界との結びつきを意識させるものでもあります。


それでは窓とは、

希望に向かって心を羽ばたかせるところ?

未来へ自己を発信するベースキャンプ?

悔恨を癒すところ?


オランダの画家ヨハネス・フェルメール(1632~1675)が窓とその傍に立つ人物を多く描いています。彼の描いた窓はとても奥深い意味を持っていますね。

作者の窓とは・・・

ひとつは「心の平安」を表す手段として取り入れています。

幼子を抱く母親の姿をモチーフとして良く採用していますが、そこに窓を配することによって、安らぎの空間をより濃密なものにしようと試みています。

窓の外には樹木があり、空には雲、遠くに山並みが見える。その陳腐とも言える配材は、窓に特別な意味を持たせ、母と子の姿を非日常のものとすることを望んでいないからです。

静かな雰囲気。心安らぐ空間。

それを求めています。


ふたつ目は、窓から吹き込む風。

カーテンの揺れでそれを表現しています。

風は心の揺れ? いえそうではありません。

風は息吹。命あるものが生きていることの証。

要するに、爽やかな雰囲気をプラスしたいためですね。


更に意味づけがあるものと言えば、室内の暗さでしょうか。

母親の心の内面を表している・・・なんて、ちょっと気取り過ぎています。

暗い室内は陽光を際立たせたいため、とお考えください。


世界にはいろんな窓があり、それぞれに画趣をそそられますが、窓枠の装飾が立派なものは重苦しさが漂ってしまい、上手くいきません。

一方、あっさりした窓枠はどうしてもその傍の母と子のコスチュームが現代風になってしまいます。

ですが、母と子は基本的に「聖母マリアと幼子イエス・キリスト」です。

もちろん。


そこにたたずめばとても心安らぐ、そんな窓があなたにはありますか?

(P178a 窓辺の母と子〈1〉部分 銅版画)

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