2021.11.3
〈神われらと共に〉
夢を見た、クリスマスの夜に。
浜辺を歩いていた、主と並んで。
砂の上に二人の足が、二人の足跡を残していった。私のそれと、主のそれとを。
ふと思った――夢の中でのことだ――
この一足一足は、私の生涯の一日一日を示している、と。
立ち止まって後ろを振り返った。
足跡はずっと遠く、見えなくなる所まで続いている。
しかし、ひとつのことに気づいた。
所々、二人の足跡でなく、一人の足跡しかないのだ。私の生涯が走馬灯のように思い出された。
何という驚き。
一人の足跡しかない所は、生涯で一番暗かった日とぴったり合う。
苦悩の日、悪を企んだ日、自分だけが可愛かった日、不機嫌な日、試練の日、やりきれない日、自分にやりきれなくなった日。
そこで、主の方に向き直って、あえて文句を言った。
『あなたは、日々私達と共にいると約束されたではありませんか? 何故約束を守ってくださらなかったのです? どうして人生の危機にあった私を、一人で放っておかれたのです? まさにあなたの存在が必要だったその時に』
ところが、主は私に答えて言われた。
『友よ、砂の上に一人の足跡しか見えない日。私は君を担いで歩いていたのだよ』
アデマール・デ・バロス(ブラジルの詩人)
「賛美する旅人」 曾野綾子・新潮文庫より この詩は「浜辺の足跡(作者不詳)」としても、良く知られています。
〈木版画・一部加工 「浜辺の足跡」〉
Comments