2021.11.21
長崎市浦上教会の「被爆のマリア」。
原爆によって廃墟と化した瓦礫の中から見いだされた、木製のマリア像の頭部。
初めてその写真を目にしたとき、私は強い衝撃を受けた。
焼け跡が残る頬、カラスの目が溶けて無くなったため、真っ黒に見える大きな眼窩。
何と表現すれば良いのか言葉が見つからないが、心が強く揺さぶられる。
機会が与えられたら「被爆のマリア」を一目見たいと、心から思った。
私は聖母マリアを描いている。もう何年描き続けているだろう。
これまでに描いたたくさんのスケッチを広げてみる。ことごとく不満足なものばかりだ。
「被爆のマリア」、その豊かな表情!
自分の非力を見せつけられているようで、写真を観た途端に気持ちが萎えてしまう。
──どうして私はいつまで経っても、このような見る人の心を動かす絵を描けないのだろう
素晴らしいもの、感動を与えるものを観たあとは、私はしばらく惨めな気持ちを整理できずにいるのだが、ようやく落ち着いて、、そしてまた気持ちを奮い立たせるのだ。
──もういちどやってみよう
「被爆のマリア」のような、優しさが満ち溢れていて、観る人に力を与えてくれる絵を創ろう。
(Nov.10.2009)
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